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アジア予選の主力に加えニューパワーもリスト入り
4月に就任したカルロス・オルテガ監督(スペイン、FCバルセロナの監督兼任)のもと、急ピッチで選手選考を進め、パリ・オリンピックに臨む日本男子代表・彗星ジャパン。
6月28日には、本大会に臨む14人とAP選手(交代選手)3人が発表された。
彼らがどのような選手なのか、改めてお伝えしていこう。
No.1
中村 匠(なかむら・たくみ)
所属:豊田合成ブルーファルコン名古屋
生年月日:1996年8月2日(27歳)
出身地:福岡県
身長:190cm
利き腕:右
ポジション:GK
球歴:松崎中(福岡)→福岡魁誠高(福岡)→福岡大
前回の東京大会では、最後に代表の座を逃し、悔しさを味わった。そこから3年、中村は圧倒的な力をつけて日本を代表するGKへと成長した。日本リーグ4連覇中の豊田合成の絶対的な守護神として、2シーズン連続のリーグMVPに輝くなど、名実ともに日本No.1GKになった。
手足の長さ、柔軟性を活かしたキーピングでゴールを守り、海外勢のシュートにもアジャストできる。7月3日のフェロー諸島戦では、相手のノーマークシュートを何度も防いでチームを勝利に導いた。
初のオリンピックでも、いつも通り試合を楽しむ姿勢で臨んでほしい。
No.2
安平 光佑(やすひら・こうすけ)
所属:ヴァルダル(北マケドニア)
生年月日:2000年6月29日(24歳)
出身地:富山県
身長:172cm
利き腕:右
ポジション:BP
球歴:窪スポ少(富山)→西條中(富山)→氷見高(富山)→日体大→キールⅡ(ドイツ)→日体大→ニーム(フランス)→プウォツク(ポーランド)→ヴァルダル→アル・カーディーシーヤ(クウェート)
小学生のころから“天才”と呼ばれてきた新時代の司令塔。高校時代には高校3冠を達成した。大学在学途中からヨーロッパに渡って腕を磨き、プウォツクでは日本人男子選手初となるチャンピオンズリーグ出場を果たした。
172cmと小柄だが、緩急をつけたフェイント、1対1で自ら得点し、味方のチャンスを演出。代表歴は浅いが、今や彗星ジャパンに最も欠かせない選手に。7月21日に行なわれたドイツとの親善試合終盤に右足を負傷したのは気がかりだが、間違いなくパリで躍進できるかどうかのカギを握る選手だ。
No.4
櫻井 睦哉(さくらい・ともや)
所属:トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷
生年月日:1999年10月18日(24歳)
出身地:茨城県
身長:190cm
利き腕:左
ポジション:RW
球歴:新治ク(茨城)→千代田中(茨城)→藤代紫水高(茨城)→明大
ここ数年で急速に力をつけてきた大型左腕。とくに昨シーズン、所属チームの車体がラース・ヴェルダーヘッドコーチ体制になってからDFでの出番が増え、初の代表入りを勝ち取った。
最大の特徴は身体の強さを活かしたDF。左利きの中でDF力はトップクラスで、相手のエースを封じる働きに期待がかかる。OFもサイドシュート、回り込みのミドルシュートと伸び盛り。メンバー選考の最後に落選した小塩豪紀(合成)からサイドシュートなど多くを学び、「小塩さんの分まで」という思いも強い。
No.9
杉岡 尚樹(すぎおか・なおき)
所属:車体
生年月日:1994年4月18日(30歳)
出身地:京都府
身長:178cm
利き腕:右
ポジション:LW
球歴:桃園小ク(京都)→大住中(京都)→桃山学院高(大阪)→中大
東京オリンピック後は左サイドの1番手として彗星ジャパンをけん引してきた俊足サイド。手首の強さを活かしたサイドシュートでゴールネットを揺らし、必殺のループシュートを織り交ぜた緩急で相手GKとの駆け引きを制す。
積極的なDFを好むオルテガ監督のシステムが機能するためには、杉岡らが入る1枚目の働きも重要になってくる。DF面でも貢献し、そこから速攻に走ってゴールを奪いたい。
No.13
吉田 守一(よしだ・しゅいち)
所属:ナント(フランス)
生年月日:2001年3月26日(23歳)
出身地:和歌山県
身長:193cm
利き腕:右
ポジション:PV
球歴:那賀高(和歌山)→筑波大→タルヌフ(ポーランド)→ダンケルク(フランス)
高校でバスケットボールからハンドボールに転向し、競技歴わずか4年で東京オリンピック(2021年)に出場し、オリンピアンになった。その後も歩みを止めず、アジアを代表するポストプレーヤーへと成長した。
これまで日本はライン際がウィークポイントの1つで、世界と戦った際に苦しんできたが、規格外のパワーでそのイメージを払拭。大学在学中からヨーロッパに渡って評価を高め、2024−25シーズンからフランスの強豪ナントへの移籍を勝ち取った。
ユース代表時代からコンビを組む安平と息はピッタリで、パリでもこのホットラインが機能すれば、1次リーグ突破が近づいてくる。
No.15
部井久アダム勇樹(べいぐ・あだむ・ゆうき)
所属:ジークスター東京
生年月日:1999年4月21日(25歳)
出身地:福岡県
身長:195cm
利き腕:右
ポジション:BP
球歴:多々良中央中(福岡)→博多高(福岡)→中大→セソン・レンヌ(フランス)→サラン(フランス)→中大→ジークスター東京→中大→東京→アル・ジャジーラ(UAE)
高校3年時にそのポテンシャルを高く評価されて日本代表入りして早7年。東京オリンピック、世界選手権、アジア大会、パリ・オリンピックアジア予選などを戦い、年齢的には中堅だが、経験的にはベテランと言ってもいいだろう。
高校生離れした豪快なシュートで一躍注目を集めたものの、フランスリーグなどを戦う中でDF力が向上。フィジカルも年々強くなり、チームでも日本代表でも中央を守るようになった。オルテガ監督も部井久のDF力を高く評価しており、今やDFの要となった。
No.19
徳田 新之介(とくだ・しんのすけ)
所属:アル・ドゥハイル(カタール)
生年月日:1995年12月6日(28歳)
出身地:山口県
身長:178cm
利き腕:左
ポジション:BP
球歴:IDBスポーツク(山口)→岩国中(山口)→岩国工高(山口)→筑波大→ダバシュ(ハンガリー)→豊田合成→アル・ドゥハイル(カタール)→合成→アル・ドゥハイル→アル・カーディシーヤ(クウェート)→アル・ドゥハイル→アル・ハリージ(サウジアラビア)
日本では珍しい中東でプレーする選手。その理由は、アジアで勝つため。カタール、バーレーンなどの強敵に対する意識を変えるために、現地でレベルアップに励んだ。そうした成果を存分に発揮し、アジア予選では要所で速攻を決めて突破に貢献した。
バックプレーヤーとしては小柄だが、そのサイズ感を活かして相手DFのすき間を狙う。決して大型選手にも屈しない気持ちの強いカットインで、ゴールネットを揺らす。
No.20
渡部 仁(わたなべ・じん)
所属:車体
生年月日:1990年1月17日(34歳)
出身地:大分県
身長:183cm
利き腕:左
ポジション:BP・RW
球歴:明野西小(大分)→明野中(大分)→大分舞鶴高(大分)→日大→トヨタ車体→アル・カーディシーヤ
このオリンピックではキャプテンマークを巻く。日本代表でのキャリア、トレーニングに取り組む姿勢、34歳にして衰えないフィジカルなど、指揮官が厚い信頼を置きたくなる材料は揃っている。
長い代表活動で、酸いも甘いも経験してきた。ポジションも右サイドから右バックに転向し、それもすっかり板につき、元木博紀(ジークスター東京)とのコンビネーションは日本のストロングポイントに。徹底的に鍛えたフィジカルの強さはチーム随一で、60分間、ハードワークする。
No.21
岡本 大亮(おかもと・だいすけ)
所属:車体
生年月日:1995年3月29日(29歳)
出身地:山口県
身長:190cm
利き腕:右
ポジション:GK
球歴:岩国工高(山口)→中部大
中村、坂井幹の壁を崩せず、出番機会は限られていたが、最後の選考合宿で評価を逆転させてオリンピック行きの切符をつかんだ。
足を大きく上げたり、あえて体勢を崩しながら誘い込んだりと、ヨーロッパのGKを彷彿とさせるようなキーピングは必見。中村と二人三脚でゴールを守り、チームの勝利に貢献したい。
No.25
元木 博紀(もとき・ひろき)
所属:東京
生年月日:1992年2月14日(32歳)
出身地:茨城県
身長:182cm
利き腕:左
ポジション:RW・BP
球歴:新治小(茨城)→千代田中(茨城)→藤代紫水高(茨城)→日体大→大崎電気
所属チームでは右バックでプレーするが、代表では右サイドがメイン。ポジションの違いによる感覚のズレを感じさせないような安定感があり、ここぞの場面で頼れる選手。アジア予選でも味方が作ったチャンスを確実に得点に結びつけた。
ハンガリー、ドイツとの親善試合ではやや精彩を欠いたが、本番までにしっかりとアジャストしてくれることだろう。
No.27
玉川 裕康(たまかわ・ひろやす)
所属:東京
生年月日:1995年4月27日(29歳)
出身地:埼玉県
身長:200cm
利き腕:右
ポジション:PV
球歴:田島中(埼玉)→浦和学院高(埼玉)→国士大→大崎電気
前回の東京大会も有力候補の1人だったが、最後に腰を痛めて無念の落選。今回こそはという強い思いのもと、コンディションを崩さず力をつけ続けて、見事に代表の座を射止めた。
チーム最高となる2mの身長を活かしたDFが売りで、中央の守備を担う。壁となって相手のシュートを弾き返したい。課題だったOFにも改善が見られ、シュート決定率が上がっている。ベンチ入りできる人数が通常よりも少ないため、出番は多く回ってきそうだ。
No.31
吉野 樹(よしの・たつき)
所属:車体
生年月日:1994年7月13日(31歳)
出身地:埼玉県
身長:183cm
利き腕:右
ポジション:BP
球歴:三郷HC(埼玉)→三郷北中(埼玉)→市川高(千葉)→明大→トヨタ車体→アル・ドゥハイル(カタール)
押しも押されもせぬ得点源へと成長。独特のシュートフォームは吉野の代名詞で、豪快かつシャープなミドルシュートで相手ゴールに迫る。
2023-24シーズンは小さな故障が多かったが、終盤になってグンと調子を上げて、プレーオフでは車体のエースとして奮闘した。
新体制では、まだ満足できるようなパフォーマンスを見せられていないが、「もっとできる選手とわかっている」とオルテガ監督。その期待に応えられるようなプレーをパリで見たい。
No.39
藤坂 尚輝(ふじさか・なおき)
所属:日体大
生年月日:2002年7月1日(22歳)
出身地:福井県
身長:180cm
利き腕:右
ポジション:BP
球歴:北陸電力ブルーサンダージュニア(福井)→明倫中(福井)→北陸高(福井)→日体大→北陸電力→日体大→福井永平寺ブルーサンダー
大学4年生がサプライズでメンバー入り。昨夏のPSGハンドボール(フランス)戦でデビューするも、その後は小さなケガに苦しんだ。しかし、選考を兼ねた強化合宿では切れ味鋭いフェイントを連発。見事にパリ行きの切符をつかんだ。
23年の世界ジュニア選手権で得点王に輝くなど、その得点力の高さは折り紙つき。22歳の誕生日に迎えたフェロー諸島戦でも好プレーを見せた。大学の先輩・安平との共演もオルテガ監督の構想にあり、パリでの切り札になるか。
No.44
髙野 颯太(たかの・そうた)
所属:車体
生年月日:1998年8月19日(25歳)
出身地:東京都
身長:193cm
利き腕:右
ポジション:LW・PV
球歴:府中HC(東京)→府中四中(東京)→浦和学院高(埼玉)→筑波大
DF能力の高さはチーム1と言っても過言ではない。6:0DFの2枚目、3枚目、5:1DFのトップと複数ポジションを守れるのは大きな強みだ。
昨秋のアジア予選まで代表での序列は低かったが、突破の原動力になった5:1DFで重要な役割を担ったことが大きな転機になり、今ではDFで欠かせない人材に。
OFも左サイドにポストとマルチにプレーでき、とくにサイドシュートは高さを活かした駆け引きが見られ、精度も上がってきている。
No.17(AP)
坂井 幹(さかい・もとき)
所属:大崎オーソル埼玉
生年月日:1995年11月10日(28歳)
出身地:神奈川県
身長:193cm
利き腕:右
ポジション:GK
球歴:有馬高(神奈川)→筑波大→豊田合成→ヴァルル(アイスランド)→合成
昨年のアジア大会では、メインとなった途中出場時に集中力を欠く場面があり、それをダグル・シグルドソン前監督に叱責された。そこから改めて自分に与えられた仕事、役割を見つめ直し、アジア予選では復調。冷静にシュートを防ぐシーンが何度も見られ、チームに貢献した。
APというポジションは本人としては悔しいだろうが、チームにとっては、中村、岡本を後方から支え、万が一のアクシデントに備える人材としては心強い限り。
No.38(AP)
水町 孝太郎(みずまち・こうたろう)
所属:合成
生年月日:1995年3月13日(29歳)
出身地:福岡県
身長:183cm
利き腕:右
ポジション:BP
球歴:とびうめキッズ(福岡)→花畑中(福岡)→西南学院高(福岡)→日大→豊田合成→リューベック・シュバルタウ(ドイツ)
東京オリンピック後はアキレス腱断裂など、度重なるケガで代表からも離れていたが、2023-24シーズンの途中に復帰すると、所属チームでインパクトあふれるプレーを見せる。5月のプレーオフでは決勝点を決めるなど、復帰後からの勢いそのままにAPでパリの代表に。
重戦車のように、相手DFにつかまれても止まらない強さは、ほかの選手にないよさで、左バックでもセンターでもプレーできる水町が控えるのは、チームとして大きい。
安平の状態次第では交代も充分にありえるだろう。
No.74(AP)
笠原 謙哉(かさはら・けんや)
所属:ハルズール(アイスランド)
生年月日:1988年5月15日(36歳)
出身地:福島県
身長:196cm
利き腕:右
ポジション:PV
球歴:聖光学院高(福島)→東海大→トヨタ車体→ハルズール→タルヌフ(ポーランド)
トレーニング、身体作りへの造詣が深いベテラン。車体に加入後、なかなか出番を得られない中で地道に取り組んだ肉体改造が実を結び、代表選手へと上り詰めた。前体制ではDFの柱としてチームを引き締め、数々の国際大会に出場。
今回はAPでの選出となったが、「とにかくチームのために自分ができることをやるしかない」と、コート内外でチームを下から支える役割に期待がかかる。